欧州遠征で体感した世界の列強との戦いを糧に…日本代表が次に見据えるのはEAFF E-1 サッカー選手権

東アジアの覇権を争うEAFF E-1サッカー選手権が12月8日に日本で開幕。日本代表は9日に朝鮮民主主義人民共和国、12日に中国、そして16日に韓国と対戦し、2大会ぶりの優勝を目指す。2連敗に終わった欧州遠征を含め、今大会はロシアワールドカップに向けた生き残りへ真価を問われる重要な戦いの場となる。

日本代表は11月の欧州遠征でブラジルに1-3と敗戦。結果以上の“差”を痛感させられたが、そこで世界を知ったことで意識が大きく変化。続くベルギー戦に向けて短い時間の中でやるべきことを整理し、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督からの要求に加えて選手間でも綿密な話し合いを重ねることで進化。試合は72分に喫した失点で0-1に終わり、攻撃面で課題を大きく残したものの、日本の世界における現在地やスタンダードを手にする意味で有意義な2試合となった。

「フィジカルコンディションが上がればもっと攻撃、守備でいい戦術が使える。特に国内組。12月に大会がありますが、そこに準備してほしい。ここで国内組から本大会で代表に入るかどうかの判断となる」

ベルギー戦後の記者会見、ハリルホジッチ監督は12月に日本で開催されるEAFF E-1 サッカー選手権(以下、E-1)に向けた言葉をこう残している。これまでも国内組に対して厳しい言葉を発することが多かったが、今回の欧州遠征で基準はさらに引き上がっているのは間違いない。つまりブラジル、ベルギーとの対戦で世界の厳しさを体感し、代表選手としてのたくましさを増した選手たちと比較しても負けないだけのメンタリティやプレーを国内組の選手も見せてアピールしていく必要があるということだ。球際の激しさ、予測や判断の速さ、チームへの犠牲心、そして集中力――。すべてにおいて世界標準のプレーをしなければ、指揮官を納得させることも、満足させることもできない。

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もちろん相手はブラジルやベルギーではないが、東アジアの覇権を目指す大会という意味では、E-1は勝負としての真剣度は高い。しかも2年前、中国・武漢で行われた前回大会では朝鮮民主主義人民共和国に敗れ、中国と韓国にも勝ち切れず、最下位で終わっている。国内組で臨んだ大会で、監督を大きく失望させる結果となっているだけに、Jリーグを代表する選手としてリベンジすることが求められる。結果としてそれが個人のアピールにもなるはずだ。

チーム編成はおそらく欧州遠征を経験したハリルジャパンの“常連”と、Jリーグで指揮官の目にとまった新戦力をミックスしたものになる。ただし、欧州遠征を経験した国内組のうち、浦和レッズがFIFAクラブワールドカップに出場した場合は、本大会と日程が重なる関係でE-1への出場が不可能となる。ベルギー相手に守備で獅子奮迅の働きを見せた槙野智章や、代表初選出ながらハリルホジッチ監督が「初めての試合にしては本当に良かった。たくさん走って守備もしてくれた」と好評価を与えた長澤和輝も不参加となってしまう。言い換えれば、それだけ他の国内組にチャンスが巡ってくるとも言える。ケガからの完全復活を期す清武弘嗣、最終予選で苦い経験を味わった大島僚太らもメンバー入りするかもしれない。指揮官にとっても国内組から戦力を発掘する最後のチャンス。これまで招集経験のある選手だけでなく、なかなか手元に呼べなかったプレーヤーを集める可能性もある。

仮に浦和勢が不在となる場合、欧州遠征の2試合に出場した山口蛍、井手口陽介、倉田秋、杉本健勇が中心となり、出場機会はなかったものの、東口順昭、昌子源、車屋紳太郎、三浦弦太はベンチから世界のレベルを感じ、チーム内での意識の高まりを共有した。順当に選ばれれば、競争の基準を引き上げる役割も期待される。特に山口について、ハリルホジッチ監督は「こういう試合でついていけるのはホタル」と高く評価しており、彼が海外組を含んだ代表チームと変わらないテンポやデュエルでチームを引っ張ることができれば、フレッシュな選手たちを評価する一つの指標になるだろう。

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もちろん、欧州遠征を経験してきたチームのスタンダードについていくだけでは、最終的に海外組も含めた23の枠をめぐる競争を勝ち残っていくことはできない。攻守のハードワークは当然として、さらに自分に何ができるのかを出すことが必要だ。有効なオプションとして指揮官に認めさせる“何か”を見せ付ける必要がある。

それが意味するものは、選手それぞれが持っているはず。分かりやすく例えれば、サイドの選手なら個の打開力、FWなら強みを生かした正確なフィニッシュだ。セットプレーキッカーやターゲットマンとして得点に絡めれば、間違いなく大きなアピールになるだろう。ハリルホジッチ監督がブラジルW杯で率いたアルジェリアでも全くの無名選手から、最後の半年間で滑り込んだプレーヤーがいた。それがドリブラーのリヤド・マフレズ、19歳で抜擢された左利きMFのナビル・ベンタレブなど、それまでのチームにない明確な武器を持つ選手たちだった。

欧州遠征の経験を踏まえて世界で戦う基準が引き上げられたと言っても、もともと険しい高みであることは想定できたこと。それがより明らかになっただけだ。E-1に参加する国内組は世界と戦うための意識と覚悟を明確に披露し、なおかつチームとしてタイトルを取りに行くために個々でできること、その中で自分の持ち味をどう出すかなど、求められるリクエストは非常に高い。だが、そうしなければ自国開催の大会制覇はもちろん、本大会行きの切符は手にできない。しっかりと考えてプレーするほど代表定着に近づくはず。いい意味で“国内組”という立場に関係なく、ロシア行きの23人に食い込むための意欲とプレーがそれぞれの選手に求められる。ラストチャンスを手にできるかどうかは、彼ら自身に懸かっている。